不器用な君だからこその
こつこつと たくさんの引き出しをつくってきて
その引き出しを精一杯 使って
小さい身体でも 出せる出力にこだわって
試合のプレッシャーにも負けずに 振り切って
ゲームの組み立てや流れを 考えて
落ち着いて 四角の中で しっかり勝負して
決して高くない身体能力を 体力を 鋭くない感性を 正面から受け止めて
そこでコツコツと積み上げた努力を 発揮して ・・・
できるようになるように 試合で理想を実現できるように
何度も何度も何度も 失敗して 悔しい思いをして 会場を後にしてきた
暑い中 寒い中 暗い中 二人で 帰路についてきた
いいテニスなのに 本当は失敗なんかじゃないのに
優勝 初めての優勝
40回目の草トー 最初の参加から2年半がたっていた
この結果が 思い描いたテニスとともに 実現したね
普段は 試合の動画なんかとらないけど
マッチポイント チャンピオンシップポイントだけ
撮らせて もらったよ
君の 小さな ガッツポーズ
小さな でもぼくには聴こえた 「よっしゃ」という声
不器用だけど きちんと 少しずつ 積み上げられる
そうやって表現できる 君だけの テニスが
俺はやっぱり 好きだな
思いの交錯
さしてかけっこの速くない彼は
単に走ることだけでなく いわゆる腱反射のない彼は
コートカバレッジが幼い頃からの課題
俺も彼にそれを伝えていたし
低学年の頃自身で信じていたほどは 敏捷性が自分にないことを
高学年にさしかかるにつれて認識した彼は
また 身体も同級生よりも二周りは小さい彼は
そして
彼のプライドを守りたくて 俺が話す
身体の大きさや敏捷性がこの年代で勝つには必要だ という言葉を聞いた彼は
自分から試合を入れようとはしなかった
あるいは そんな僕の話を聞いて
俺が 試合にでないほうがいいと思っている と思ったのかもしれない
はたまた テニス そのものがそんなに好きでもないのか
それがわからなくて 俺は 彼にきいた
もう試合で一番になるっていう目標は叶えようとしないのかい
あくまで ニュートラルな質問として
彼は もにゃもにゃいっていたけど その二週間後
4月になったら いつものところで試合にでたいから いれてくれ
そう言った
最近のレッスンで 早いボールや遠いボールに 相当ついていけるように
なっていることを実感しているからかもしれない
俺はちょっとうれしくもあり でも むしろ彼にためらわせていたのかなとも思ったり
あるいは 俺に気を使っているのかなとも思ったり
そもそもテニスのことが好きなのかもわからなかったり・・・
彼の中でも それがすべて混ざった気持ちなのかもしれない
小さな大会でもいいから 優勝できたら 気持ちいいだろうな
という彼の願いが かなってほしい気持ちは もちろんあるけど
でも 試合で 勝とうが負けようが 俺は君のテニスをみるのが好きなんだ
小さい身体も少しずつたくましくなってきて 力強くなってきて
なおそう思う
I love to watch you play !!
もう いいかな
ボレー ドライブボレー オーバーヘッド ・・・
攻めるプレーを ポイントで締めくくれるよう
ネットプレーを 身につけようといって
僕らにしては 珍しく
土曜 日曜 木曜 と 一週間に 3度の 親子連
集中して 練習して
ネットプレーの型が 身についたかな
あんまりやってなかった サーブアンドボレーや リターンの練習も したね
木曜の 最後の10分 僕のサーブから
ポイント形式で
君の力強い球 鋭いショットを 受けて
様になってきたネットプレーを 目にして
精度のあがってきた判断を 感じて
突然
もういいかな と思った
僕からテニスコートに誘って 技術練習をするのは もういいかな と
3年生に上がる年の3月末から始めた 月に2回位の 親子でのテニスコート練習
今は5年生の君だから 2年半も続けたんだね
お部屋で ボコボコ ラケットを振っていたときから数えたら
一緒にテニスをしながら アドバイスをするのは もう7年とかにもなるのかな
そう 7年
もう 僕の引き出しにはなんにも残ってないし
君はこのスポーツを楽しむのに大切な 基本的な技術は すべて身につけたと思うし
これから 週に1度のレッスンで 君が 丁寧に 丁寧に 取り組んでくれれば
磨きがかかって 多彩さがまして 感覚が一層研ぎ澄まされると思う
それがゴールデンエージの君に 必要なこと
だから
もうお父さんから テニスコートに誘うことはないから
草試合を組むこともないから
君がやりたいときだけ 遠慮なく言ってね
そのときは よろこんで お手伝いするから アレンジするから
そう伝えた
さびしさみたいなものはない 僕も その限られた時間の中で
本気で 取り組んできたから
でも なにか 一区切りかな そんな気持ち
嬉しさと、悩みと
草トーに参加しはじめて 1年半が経った
一ヶ月に2回くらい
だからもう
大会数でいえば30回を超え
試合数でいえば優に100試合を超えた
そして 昨日の試合
頭一つ大きい選手たちにも
粘り強くプレーする選手たちにも
決してひるまず そして 気持ちをきらさず 堂々たる プレーだった
なにより
互いに プレッシャーのかかった場面で
お互いが 様子見のラリーをする中で そして なかなか 「打つ」のが難しい状況で
これ というボールを見極めて 打っていく 攻めていく そして 決めにいく
4試合とも 素晴らしい 内容だった
1年半前 初めての草トーの 最初の試合
1歳半歳上の すごく素敵なテニスをする選手に
一生懸命 立ち向かって
でも 力の差は歴然で
大差のスコアで 敗れた
一年半たったら あんな 選手になれるかな なったらいいな
密かに そう思っていた
昨日の 君は そんな選手だったと思うよ
昨日対戦した選手の中には 初めての草トー参加の選手もいたね
その選手に 同じように 思ってもらえたかな
帰り道
彼が言った
僕は テニスを みずから やりたいといって はじめたわけじゃない
物心ついたときには ラケットを 握ってたんだ
いろいろできるように なった 今
テニスの 楽しさ おもしろさが やっとわかってきた気がすると
そ そうだったのか
レッスンでみせる あの笑顔は
練習や試合でみせる あの活き活きとした表情は
その一時のものだったのか
テニスそのものからくる 楽しさではなかったということか
でも とにかく テニスの楽しさを感じてもらえるまでに 至ったのなら
俺は うれしいよ
草トーだけじゃなく 公式戦に彼をだせないか きっと彼のためになる
そんな声があるんだ
民間クラブのコートで練習すれば 今から公式戦ですか 楽しみですね
なんて 見知らぬ人にきかれる
君も知っているとおりだ
そして いつものとおり 俺は気乗りがしないんだ
ノックアウト方式の公式戦が 君のために なるなんて 思えないんだ
よりレベルの高い 切磋琢磨の場は見つけるさ
でも 公式戦は・・・
俺の わがままなのか 親としての 判断なのか
かれこれ 数ヶ月
悩んでいるんだ
ゆっくりと登ってきた
俺とたまに二人で打つ他では
唯一の練習の機会 それが週イチのグループレッスン
テニススクールでの進級が きまった
8段階にわかれている キッズ ジュニアのクラス
その最上位だ
スクールに通い出したのは 5歳のとき
5年と少し をかけて 8段階を ゆっくりと じっくりと 登ってきた
これが 彼の 強さ そして よさ
だから俺はうれしい 試合に勝つことよりも
よく コツコツと つづけてきたことが
もう 俺的には 満足なんだ
君が いい テニスをしているのを みられて 幸せなんだ
むしろ 中高生もいるそのクラスのスピードについていけないだろうこと
そのことが 不安なんだ
打点にはいれれば 負けない球をうてる 重い球も打てる
でも君の脚で間に合うのか 君の反応のスピードで 間に合うのか
打つ 立て直す 戻る 反応する
いまの君では 難しいだろう
コツコツでいい 少しずつ 取り組めるかな
なによりも 自信を 笑顔を なくさないでほしいんだ
レッスンを楽しみにする姿も もう少し 観ていたいんだ
Enjoy !!
繰り返せること
彼をみていて思うこと・・・
なんども書いていて すまんけど
決して運動神経はよくない 体幹もつよくない
ただ 優れているなと思うことは
きちっと形をきめたら それに納得したら
それをやりぬく やり続ける
根気なのか こだわりなのか
そんなものがある
フォームであれ ショットの選択であれ
なんとなくできてしまうようなことは なにひとつない
でも
少し時間をかけて いったんできてしまったら
そうは崩れない それを変えない
テニスの頻度が こんなに少ないのに
びっくりするくらい いったりきたりが すくない
テニスよりも長く 深く やっている 楽器の演奏の 影響なのかもしれない
わからないけど
もちろん
ゲームの中で 相手とのやりとりで
もっと臨機応変にやってほしい
そう思うことはある
でも贅沢言ってたら きりない
彼の 誇るべき 長所だ
さぁ今日もこれから草トーだ
たまの試合を 楽しみにしている
彼の 姿が 誇らしい
試合運び
どのようにしてゲームを進めていくか、そんなことを彼に伝えてみた
いいテニスになってきて
少ない練習時間ながらに 足りない運動神経ながらに 技術も少しずつ蓄えてきて
もうそのくらいしか伝えることがなかった
それに
彼の誇りを失わせないためにも
どうやって勝ち筋を見つけるか ということを伝えたかった
ポイントのやりとり
週平均2−3時間の練習では その時間が圧倒的に足りない彼には
これを自分のものにすることも 時間がかかるかもしれない
けれど それでいい
ここまでが 俺のできること すべきこと
彼を信頼してるから
あとは彼のペースで
I love to watch you play の気持ちは変わらない
そしてときには 試合を観たい気持ちも我慢して 最後だけ お迎えにいこうかな
もう テニスの
基本的なところでは 独り立ちの時が近づいているように思う
少し寂しいけど
ただ見守る側になっていくのかな
眼を見張った
草試合に出始めて もう11ヶ月
平均して月に2回の大会
一回一回の試合で見つけた課題を
週に1度のグループレッスンと
去年の3月から続けている 月に2度の俺との練習で
一つずつ 取り組んでいく
そうやって 少しずつ 積み上げてきた テニス
彼が やりたい といっていた スタイルのテニス
リスクは高いけど 格好いい テニス
1ポイント、1ポイント、そんなテニスをやりきろうとしよう
そんな声を 試合前にかけた 今日
眼を見張った
勝ち負けじゃない そのプレーに
もうだんだんと 教えることも 少なくなってきているのかな
こんなテニスで
そして
いままで手にいれたものを 自在につかいこなして
相手とのやり取りを これから もっともっと 楽しんでほしい
そんなことを 感じた日
こんなプレーをみせられると 思わず勝ち負けにこだわりたくなる 自分
そんな自分への メッセージ でもある
自立の萌芽
テニスのプレーに 試合に 必要なことをまとめた ノートをつくっている
正しくは パワーポイントのファイルに まとめている
フォームや 戦術などの ポイントをまとめたもの
今までは
俺が ときどきそれをアップデートして
参考になりそうな動画もつけて 息子に 説明したりしていた
もう最近は 説明する内容も 少なくなってきて
(テニスで大事なことは そんなに多くないから)
そうしたら
今度は息子が 週に一度あるかどうかのオンコートの練習のあとに
自分でファイルを アップデートするようになった
パソコン貸して、と言って
彼なりに スイングのこと 攻め方のことを 彼の気持ちで 彼の表現で
こちらにも伝わる 理にもかなっている
そんな前向きな気持ちを もってくれていること
そのことに感謝だし
一歩 独り立ちなんだな そう思う
勝負はとうぶん先でいい
テニスのバランスが
ずいぶんよくなって
草トーの試合にも少しずつ 勝てるようになってきた
試合中 心を整えながら 進行できるようにも なってきた
相変わらず
週に1回程度の オンコートでの練習と
月に2回程度の 草トーナメント出場
反復なんかできない
身体で覚えることもできない
でも いい感じで イメージさえできていれば
コートに立たなくたって 練習できるんだ
野球も好き、サッカーも好き、水泳も好き
今でもいろいろ 真剣に かじってるから
スポーツに必要なこと をきっと 誰よりも よく理解できている・・・はず ?
テニスより 時間をかけて 真剣に取り組む 楽器の演奏
コンクールの緊張を しっかり乗り越えてきている お前は
プレッシャーのかかった場面の セカンドサーブなんて なんでもない・・だろう
ビッグジャンプではないけど 前進していることに
息子も
笑顔と誇りを 持てている
これでいい このままでいい
小学生の間は あと2年半は このままやっていこう
間に合わない 強くなれないって 声がきこえる
そうかもしれない
でもそうでないかもしれないよ
あとで 息子に後悔させたら いけないけれど
勝負はとうぶん先でいい そのとき お前が 勝負したかったら
みっちり 身体つくって 勝負しろ 勝負できるはずだから
勝ちたいキモチ
テーマをしぼって 練習にとりくんでいる
雨もおおい この季節
練習は 月に 10時間 くらいなのかな
でも 正面から テーマに取り組んでいるよね
試合でも それが表現できているよね
すごっ
試合を 観てると ふとそんな言葉が 漏れる
とれなかった ウイナー が とれるようになってきたね
それでも
試合には 負けちゃう
ダブルフォルトが 多いからね かなりね・・・
でも ふたりとも 言わない セカンドは いれにいこうとは いわない
それが スタイルだから
そんなの 試合に臨む姿勢じゃない って 思う人も いるかもしれない
勝とうと しないのは よくない って
それもわかる 勝ちにこだわらないようになっちゃうのかなって
でも いままで 目先のことは気にせずに やってきた
サーブにかぎらず
正しい力の伝え方 それが 遠回りなようで 近道じゃないかって
短い時間で 取り組むには 必要なことじゃないかって
いまの 上背では 難しいことだけど
サーブの 力の伝え方にこだわって
この前の試合は いい ダブルフォルトだったよ
もう少しだと おもう
この前 まけて 自分のもとに 来るときに
勝ちたいキモチとの 葛藤を 息子の目から 少し感じたけど
葛藤はいいこと
勝ちたいキモチとの 葛藤と 向き合いながら 理想を 表現できるように
それが 僕の 役割だ
素直になろう
打ちたい球を 打つべきときに打つ
折り合いをつけている
そんな姿をたのもしく 感じる
つなぐべきとき、打ち込むべきとき
押し込んでいくこと
はやる気持ちを おさえて
不安な気持ちを のりこえて
終始 落ち着いて
プレーできるように なった
コートカバレッジが ずいぶん ひろくなった
いろんな技術が 使えるようになった
成長が 結実したようにみえた この前のゲーム
「今の試合は、よかった」
満足そうな 息子
「強い相手にも同じことができるようにね」
いいプレーだな すごいな
そう思っていたのに
そう見守っていたのに
つい 余計な一言を・・・
素直になろう・・・俺
息子が ただただポジティブに
テニスに取り組んでいる
そこに甘えるなよ
大きく見えた
選手コースに通うわけにもいかないっていって じゃあっていって
親子2人で 1面のコートを借りてやるテニス
初めてそれをしたのは約1年前 去年の3月だった
(季節外れの大雪の日だった)
それからいったい何回やったのかなと思って カレンダーで数えてみた
24回
多いようにも思える 二週間に一回もやってんだ
少ないようにも思える 週に一度のスクールレッスンを足しても月にたった6回のテニス
でも
コートに立ってボールを打つだけが テニスの練習じゃないよね
そして、
コートに立ってボールを打つことにどれだけ意味を持たせられるかで
一球の価値は何倍にもなるよね
そう二人で言ってやってきた
24回目の昨日
限られた時間ですこしずつ積み上げてきた基礎
それを使って もっとテニスというゲームを楽しむために
新しいことにトライする姿勢 実を結びそうな雰囲気
なんか すごいな と思った
小さな身体が 大きく 見えた
今度の週末は テニスできないの?
息子が訊いてくる
荒削りすぎて 理想が高すぎて 大きなお兄さんたちとの試合には 勝ててないけど
息子はいたって前向き
今は 笑顔と誇りを 守れているかな
なんとか
初心
あれからもう2つの大会をこなした
試合のたびによくなる 大会のたびによくなるプレーの内容
練習と遜色のないクオリティー
それだけで ほんとそれだけで
あるいはいや
8歳で独りでコートに立って
試合をやりきるだけで
すごいと思うのに 思っていたはずなのに
内容がいいからこそ いいプレーをしていると思うからこそ
試合の結果につながってしまう別のなにか
それが気になってしまう
結果なんか求めていないのに いなかったのに
内容に結果を伴わせたくなる
そのためにはこうすればいい
その方法がわかるだけに 大人には
俺の口からそういう気持ちから出た言葉が漏れた
文章が続いた
子供は敏感だ すぐに気づく
そうじゃないという反論と 投げかけられる疑念の眼差し
あぶない
たった20日で 初心を見失っているのか
息子の笑顔と誇りを守るんだろ
俺が 守るんだろ
試合に勝たせることを通じて じゃなくて
ただ 俺の行動で 俺の言葉で 守るんだろ
息子を強くさせることを通じて じゃなくて
もっともっと テニスのおもしろさを 伝えることで 守るんだろ
そうだろ
たのむぜ、俺